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身体拘束については介護現場を含めて様々な固定観念があり、それが廃止への取り組みを阻害してはいないだろうか。その代表的なものは「身体拘束は本人の安全確保のために必要である」とか、「スタッフ不足などから身体拘束廃止は不可能である」という考え方である。 しかし、こうした考え方は、介護現場での実践の積み重ねにより、多くは誤解を含んだものであることが明らかになってきている。 |
身体拘束の理由として、しばしばあげられる「本人の転倒、転落事故を防ぐ必要がある」を考えてみよう。
身体拘束による事故防止の効果は必ずしも明らかでなく、逆に、身体拘束によって無理に立ち上がろうとして車いすごと転倒したり、ベッド柵を乗り越え転落するなど事故の危険性が高まることが報告されている。そして、何よりも問題なのは、身体拘束によって本人の筋力は確実に低下し、その結果、体を動かすことすらできない寝たきり状態になってしまうことである。つまり、仮に身体拘束によって転倒が減ったとしても、それは転倒を防止しているのではなく、本人を転倒すらできない状態にまで追い込んでいるからではなかろうか。
事故は防ぐ必要がある。しかし、本当に身体拘束しか方法がないのだろうか。
まず第一は、転倒や転落を引き起こす原因を分析し、それを未然に防止するよう努めることである。例えば、夜間徘徊による転倒の危険性のある場合には、適度な運動による昼夜逆転の生活リズムを改善することによって夜間徘徊そのものが減少する場合も多い。
第二は、事故を防止する環境づくりである。例えば、入所者の動線にそって手すりを付ける、足元に物を置かない、車いすを改善する、ベッドを低くするなどの工夫によって、転倒、転落の危険性は相当程度低下することが明らかになっている。
また、身体拘束を廃止できない理由として「スタッフの不足」をあげる意見もよく聞く。しかし、現実には現行の介護体制で身体拘束を廃止している施設や病院も多い。そうした介護現場では、食事時間を長くして各人のペースで食べられるようにして、自力で食べられる人を増やす、トイレ誘導を行いオムツを減らす、交換作業に時間がかからないようにシーツを改善するなど様々な工夫によってケアの方法を改善し、身体拘束廃止を実現しているのである。逆に、基準を上回る介護体制にありながら、身体拘束を行っているところが少なくないのも事実である。
確かに介護現場から言えば、人手は多ければ多い方がよい。しかし、まず何よりも重要なことは、どのような介護を目指すのかを具体的に明らかにし、身体拘束廃止に果敢に立ち向かう決意を施設の責任者、職員全体で行うことである。
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